忘れもしない2015年夏、暑さのせいか、仕事が忙しかったからか、ある日 気がつくと頭に4つも円形ハゲが出来ていました。人生初の円形ハゲに、かなりショックで、何か底知れぬ恐怖みたいなのを感じました。でも周りの人に聞いてみると、意外にも円形ハゲ経験者は少なくないようで、その事にも驚きました。そう言えば、うちのボビーにも まあるいおハゲが出来たことがあったなぁ と思い出して 2016年「毛はえ藥」を描き上げました。ストレスを抱えている子供たちが、これを読んで少しでも笑ってくれたら嬉しいです。どうぞ読んでください。
最近 ボビーは、お姉さんに帽子をかぶせてもらいます。急にオシャレになったからではありません。実は…
ボビーの頭に、まあるい おハゲが出来てしまったのです。ボビーの元気がないので、メグは心配で仕方ありません。そうだ、友だちのヘケニャに相談してみよう。
メグは、背伸びをして天井裏に住んでいるネズミのヘケニャを呼びました。
「ハゲくらいで、そんなにクヨクヨするなよ。」ヘケニャは言いました。「でも ぼく心配なんだ。ココちゃんの おじさんみたいになったら どうしよう。」
隣の おじさんは、本当にりっぱなハゲなのです。「でも大丈夫だよ。ほら おじさんは、とっても幸せそうだよ」とヘケニャは言いました。「うん そうだね」
「そうだ、おいらが毛はえ藥を作ってみるよ。確か馬ふんを天日干しにして…」
馬ふんだって!?ボビーは慌てて言いました。「いいよ いいよ。馬ふんは遠慮しておくよ」
その日お姉さんは、ボビーを動物病院へ連れて行きました。(ぼく病院は好きじゃないよ。注射とかだったらイヤだな。)
お医者さんは、色々検査をして言いました。「夏バテでしょう。心配はいりませんよ。お薬を出しておきますね。
「そうか夏バテかあ。じゃあ おいらが夏バテに効く薬を作ってあげるよ。確かトカゲのしっぽを塩ずけにして…」トカゲのしっぽだって!?ボビーは慌てて言いました。「いいよ いいよ。病院でもらった薬を飲まなくちゃいけないんだよ。だから トカゲのしっぽは遠慮しておくよ。」
しばらくすると、ボビーの おハゲは、すっかり治りました。良かったね、ボビー。
ボビーは思いました。おじさん ごめんなさい。ぼくはやっぱり、まだハゲたくありませんでした。だって、ぼくはまだ子供なのですから。でも大人になったときには、おじさんのように、ハゲの似合う幸せな大人になりたいと思います。
その頃、天井裏のヘケニャの仕事場では、毛はえ藥の研究が進んでおりました。
ある日 ヘケニャが、嬉しそうにやってきました。「ボビー、毛はえ藥が完成したんだ。ココちゃんの おじさんの頭に毎晩ぬったんだよ。そしたら黒い毛が一本生えてきたんだ。毎晩毎晩ぬったんだよ。」
「ありがとう ヘケニャ。でも 治ったんだよ、ほらっ。」「ホントだ、治ってる。良かったなあ ボビー。」
ボビーはココちゃんに教えてあげました。「おじさんのこの黒い一本の毛はね、ヘケニャが作った毛はえ藥をぬったら、生えてきたんだよ。」「すごいなぁ、ヘケニャは毛はえ藥も作れるんだ。でも、なんだか…ちょっと 臭いのよね。」
「うん、だって 馬ふんだもん。」とボビーは答えました。