ボビーズ日記

絵本作家になりたい2人組ボビーズの落選日記

講談社絵本新人賞落選作品 。傑作だと思ったのになぁ…

去年 講談社に応募した作品ですが、お話しの結末を思いついた時、自分で考えた お話しなのに感動して泣いていました。(仕事中)

絵本が完成した時には、とうとう傑作を描きあげてしまったと思いました。

なのに なのに 、結果は一次通過しただけでした。いつもなら、一次通過しただけでも 飛び上がって喜ぶのに、その時は 喜べませんでした。

だって 傑作だと思っていたし、私たちのデビュー作になると確信していたのに。その確信は いったいなんだったのか…   そして私はブログで公表することを決意したのでした。

「たいりょうあみ」どうぞ読んでください。

むかしむかし あるところに、五平という名の若者が おったのじゃ。

f:id:takashimari:20181106234824j:plain五平は働き者で、気だての良さが取り柄でのう。皆から とても好かれておったのじゃ。

f:id:takashimari:20181106235215j:plainワシは 独り暮らしの年寄りで、この先 長くないと思っての。

f:id:takashimari:20181106235436j:plainワシの大事な お宝 たいりょうあみを、好きに使えとやったのじゃ。

f:id:takashimari:20181106235832j:plain五平は たいそう喜んで、海に出ては 網を投じ。

f:id:takashimari:20181107000041j:plain山に入っては、網を投じ。毎日 大量に持ち帰っては、皆にも分けてやったのじゃ。

f:id:takashimari:20181107000359j:plainところがそのうち、畑が荒れ放題になってのう。とうとう牛の世話も、せんようになってしまったのじゃ。

f:id:takashimari:20181107000710j:plain楽しみにしておった ワシとのお茶にも、顔を出さんくなってしまった。

f:id:takashimari:20181107000938j:plainある日 ワシは、イライラした五平の顔を見て 思い出したんじゃ。

f:id:takashimari:20181107001157j:plain今の五平は、若かりし頃の ワシと同じ顔をしておる。心の無い顔じゃ。

こりゃあいかん。このままでは、五平の心が、たいりょうあみに捕らえられてしまう。こうしてはおられん、五平から たいりょうあみを取り上げにゃあならん。

f:id:takashimari:20181107001904j:plainその夜、さっそく 五平の家へ行っての。「たいりょうあみは、お前にやったのじゃが、ちと時期が早かったようじゃ。もうしばらくワシが 預かっておくことにする。」「何をするんだ じいさん。渡すもんか、これは俺のもんだ。」慌てた五平が、灯りを倒してしまっての。あっという間に火が広がって、消そうとしたんじゃが 間に合わなくての。

f:id:takashimari:20181107002841j:plain命からがら外に逃げたんじゃ。その時 牛が鳴いての「モーー」「待ってろ、俺が助けてやるからな。もう少しの辛抱だ。」五平が 牛小屋に飛び込んで行ったのじゃが、

f:id:takashimari:20181107003341j:plain牛小屋もすぐに火につつまれてしまっての。

このままでは、五平も牛も死んでしまう。どうすればいいんじゃ。ええい、一か八かじゃ。「たいりょうあみよ、この火を全て捕えるのじゃ。」ワシは たいりょうあみを、力いっぱい投げたんじゃ。

f:id:takashimari:20181107004246j:plainなんということじゃ、たいりょうあみは 凄まじい勢いで、火をかき集めていくではないか。しかし同時に、たいりょうあみは、捕らえた火によって燃え尽きて、灰となってしまったのじゃ。

f:id:takashimari:20181107004824j:plain「じいさん ごめんよ。俺のせいで、大事な たいりょうあみが燃えちまった。」

「五平よ、これで良かったのじゃ。お前も 牛も 無事じゃったではないか。これで良かったのじゃ。」

f:id:takashimari:20181107005443j:plainしばらくすると、五平は元気になって、以前のように よく働くようになった。冬までに新しい家を建てるのだと張り切っておる。これで良かったのじゃ、本当に。

ワシか?ワシも元気じゃよ。この先短いなんてことはない。何しろワシは決めたのじゃ。五平の幸せを、見届けねばならんとね。

f:id:takashimari:20181107010344j:plainおしまい。